忙しい中でも休息をしっかり取れている方とそうでない方の違いってどこに現れると思いますか?
私たちは、これまで数多くの働く人の眠りを見てきましたが、違いを生み出す大きな要因は「寝る前のリラックス」にあると感じています。
下記は約5000人のビジネスパーソンの睡眠満足度別に、快眠アクションの実施率を見たグラフです。数ある快眠アクションの中で、睡眠満足度に比例して、圧倒的な変化が出たのが「寝る前のリラックス」でした。
なんと「睡眠に満足している」と回答した人に比べて「まったく満足していない」と回答した人の寝る前のリラックス状態は67%も低下しています。
このことから、睡眠に満足していない人のうち、かなりの人が寝る前にリラックス状態になっていないことが明らかです。逆を返せば、寝る前のリラックス状態を改善するだけでも、眠りが改善できる余地は大きくあるということです!
ということで、「寝る前のリラックス」をテーマに、以下の順番でお伝えしていきます。
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1.寝る前のリラックスってどういう状態?
2.リラックスに大切な自律神経とは
3.リラックスするって実は難しい
4.リラックスは、準備が10割!
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1.寝る前のリラックスってどういう状態?
ここ最近、あなたの寝る前の状態を振り返ってみましょう。リラックスした状態で眠りにつけていますか?
リラックスしている状態とは、このような状態を指します。
・呼吸が穏やか、心拍が落ち着いている
・体や心が緊張から解放されて、ほぐれている
・考えごとなどで頭がいっぱいになっていたり、不安を感じていない
一方で、仕事が終わらない・・・最近トラブル続きだけど、どうしよう・・・今日こうしておけば良かったな・・・など、このような状態のまま眠りにつこうとすると、うまく寝つくことができなかったり、途中で目が覚めてしまったりと、よい眠りを取ることが難しくなります。
2.リラックスに大切な自律神経とは
この背景にあるのが、私たちの体に備わっている「自律神経」です。自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられます。日中は交感神経が優位の状態ですが、就寝時は副交感神経が優位になるように切り替える必要があります。ただし、体や心が興奮していたり活動的な状態であると、交感神経が優位になり、眠りにつくことが難しくなります。
3.リラックスするって実は難しい
さて、交感神経と副交感神経の特徴についてです。
サバンナの動物を思い浮かべてみましょう。
生物が生き抜いていくためには、敵におそわれそうになったとき、すぐに逃げられるもしくは戦える必要があります。そのため、活動モードで必要となる交感神経はすぐに切り替えができるよう備わっていて、その速度は0.2秒程度(ほぼ一瞬)と言われています。寝坊したことがある経験がある人ならわかると思いますが、マズい!と青ざめて、一瞬で飛び起きますよね。それが交感神経に切り替わるということです。
一方で、副交感神経への切り替えは、生物の生き抜く原理に照らし合わせると優先度が低くなることからもゆっくりで、最低でも5分程度はかかると言われています。
そのため、ベッドに飛び込んで「はい!リラックスして!」と念じてもすぐには切り替わらないですし、逆に「なんでリラックスできないんだ!」と緊張状態を作り出してしまうことにつながりかねません。私たちの体のメカニズムを踏まえると「リラックスには、それなりに時間がかかる」ことを押さえておきましょう。
4.リラックスは、準備が10割!
ここからはリラックスしていくうえで重要なことをお伝えしていきます。
結論からお伝えすると、リラックスは「準備が10割」です。「寝る前の仕込み」と「寝る前の儀式」のポイントを押さえていきましょう。
寝る前の仕込みは飛行機が着陸するときのイメージ!
飛行機が着陸するときを思い浮かべてみましょう。滑走路につくだいぶ前から、ぐーっと高度を下げていきますよね。これが副交感神経に切り替えていくイメージです。
では、副交感神経に切り替えていくために、寝るどのくらい前から、何ををしてあげる必要があるのでしょうか。
実は、下記図の通り、眠りにつく何時間も前から体は眠りにつきやすいように変化しています。逆を返せば、飛行機の例えでいくと自然に着陸体制に入っているため、この体の中の動きをできるだけ止めずに、後押ししてあげることが必要です。
では、日ごろの生活の中で具体的にどのようなことをやっていくとよいかをお伝えしていきます。
体をほぐすお風呂のアプローチで心もほぐして
眠りにつくまでの時間で欠かせないイベントは「お風呂につかる」ことです。
上図の通り、就寝に向けて脳の温度(深部体温)が下がっていくことで眠気が起こります。
寝る1〜2時間前にお風呂につかって一時的に深部体温を上げてあげることで、深部体温を下げようという力がより強く働き、よりよい寝つきにつながります。
そして、人は不安や緊張、恐怖などのストレスを抱えているとき、無意識のうちに体に力が入っています。これは、筋肉が緊張状態になっているということでもあります。お風呂でしっかり温めることで体の緊張状態がほぐれ、自然と心のリラックスにもつながっていきます。
交感神経を刺激する活動を減らす
夜遅くまで、強い照明を浴びたり、スマホやPCを見続けることは、交感神経を活性化してしまいます。さらに、せっかく就寝に向けて眠りを促進する「メラトニン」の分泌をストップしてしまいます。飛行機の例えだと、せっかく着陸体制に入っているのに、それをやめさせる行為と同じようなものです。
寝る2時間程度前からは、できるだけスマホやPCから離れるようにするのが理想です。とはいえ、もうちょっとスマホを見ていたいんだよね、という人は、自分の交感神経を刺激しそうなものをブロックできるよう工夫してみましょう。
▼工夫① スマホやアプリの通知オフの設定▼
通知が来ると気になってしまいますよね。スマホやアプリによっては「おやすみモード」や「通知オフ設定」などで指定時間の通知をオフにすることができますので、思い切ってシャットダウンする時間を作りましょう。
▼工夫② つい見てしまうアプリはトップページからさよなら▼
ついつい習慣で見てしまう、気になってしまうアプリを視界から遠ざけましょう。スマホの別ページに移動してみるだけでも変わります。また、ちょっと荒療治ですが、SNS系アプリをスマホから消してPCでしか見れないようにしてみることも一つかもしれません。
寝る前の儀式=自分の快眠スイッチを見つけて
寝る前に、ハーブティーを飲む・瞑想をする・音楽を聴いたりすることで、よく眠れるという人は、特定の行動が快眠スイッチとして機能しています。自分にあった快眠スイッチを見つけて、どんな環境でもできる「寝る前の儀式」を習慣化していきましょう。
例えば、私の快眠スイッチは、最近は肌に触れるものの影響が大きいと感じています。ホテルの備え付けのパジャマだと、どうも寝心地が悪いと感じることが多かったのですが、自分が使い慣れたパジャマを持っていくようになり、それに着替えることで、心が落ち着いて、環境が変わってもあまり気にすることなく、眠りにつくことができるようになったと感じています。
また、寝る前にスイッチを切り替えにくい、ついつい色んなことを考えてしまう人は、3goodthingsで寝る前の思考をポジティブにしていくこともおすすめです。
3goodthingsとは「毎晩寝る前に良いことを3つ書くことを1週間継続すると、その後半年間にわたって幸福度が向上し、抑うつ度が低下する」という研究結果も出ているメソッドです。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
「3good thingsエクササイズのススメ」
マーク・ザッカーバーグ氏、ビル・ゲイツ氏、ジェフ・ベゾス氏など、11人の成功者の就寝前のルーティンを紹介した記事も参考になりますよ!
「成功者11人が寝る前に行う、驚くほど普通なルーティン」https://www.businessinsider.jp/post-105742
自分の心が落ち着く、リラックスできる快眠スイッチを見つけていきましょう!
寝る前のリラックスでよくある質問
Q:寝る前に音楽をかけて寝るとリラックスできる気がしているのですが、良くないでしょうか?
A:スムーズな寝つきにつながるようであれば音楽を聴くことはおすすめです。一方で、眠った後も音楽をかけっぱなしにしてしまうと、音で起きやすくなってしまいます。そのため、一定時間でストップできる設定にしておきましょう。
Q:緊張を緩めてリラックスと言われても、日頃から緊張ばかりしているとどのような状態がリラックスなのかわかりません。
A:今すぐできる「筋弛緩法(きんしかんほう)」を試してみましょう。体に力を入れて緊張した状態を意図的に作り、リリースすることで筋肉と心の緊張をほぐすリラックス法です。数回繰り返すと、体がリラックスして、眠りの状態も良くなります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。https://portal.neurospace.jp/blog/relax
Q:アロマなどの香りは眠りによい効果がありますか?
A:現状、香りが眠りに対して明確に効果があるとまで示されているものは少なく、現時点でははっきりと解明されてはいません。ただ、自分が心地良いであったり、リラックスできると感じる香りに包まれて過ごすことは、眠りにとってもポジティブにはたらく可能性が高いと考えられます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。https://portal.neurospace.jp/blog/sleepitem3