■概要
旭化成株式会社では、2020年4月に健康経営担当役員、同補佐を任命し、健康経営推進室を設置、同年10月に、「健康経営宣言」を行い、国内主要製造拠点で推進体制の整備、グループ全体の中期的なKPIを設定し、実施する施策も併せて検討しました。さらに2021年4月より、国内9つの主要拠点の産業保健スタッフが所属する健康管理センター等を健康経営推進室の傘下とし、健康経営の強化に取り組んでいます。
また、健康経営目標の一つとして、「睡眠の質・量の向上」を新たに掲げ、2022年度から健康経営目標における睡眠のKPIとして新たに「睡眠で休養が十分取れていない者の割合の低減」を設けました。
このような取り組みのなかで、株式会社ニューロスペースは、2021年度より2期連続で、睡眠改善プログラムや睡眠リテラシー向上のための睡眠セミナーを実施しております。
■プログラム内容
旭化成株式会社では、2021年度よりISI(不眠症重症度質問票)のスコアをもとに、不眠度合いの強い方を対象に睡眠改善プログラムを実施しました。睡眠改善プログラムは、Fitbitで計測した睡眠データをもとに、個人の睡眠傾向や睡眠課題を個人レポートで可視化したうえで、研修会や各サポートツールを通じて、より良い睡眠をとるための生活習慣や考え方の習得を目指すプログラムです。
単なるアプリやソフトウェアだけの介入では継続することが難しいため、ニューロスペースでは人的介入も大切にしながら、研修会や個別相談会(任意)を通して、期間中、伴走する形でプログラムを提供することが特徴となっています。
プログラム期間は約7週間で、2022年度は約70名の方が参加されました。
図1:プログラムの流れ
■導入の背景について
【旭化成株式会社 市川様・永田様から】
────どうしてニューロスペースの睡眠改善プログラムを導入することに決めたのでしょうか?
2021年より本格的に健康経営がスタートしたことに合わせて、当社の健康経営目標の一つである、「睡眠の質・量の向上」に繋げられるサービスを探しておりました。
そのなかで、ニューロスペースの睡眠改善プログラムを知ったことが最初のきっかけになります。その後、複数回の打ち合わせを重ね、2021年には、他社の睡眠サービスと比較をするためのトライアルを行いました。
その結果、
・全体的な満足度
・アドバイスの分かりやすさ
・継続のモチベーション
などの項目で、ニューロスペースの睡眠改善プログラムの評価が一番高く、正式に採用することになりました。
2021年の初年度に実施したプログラムで参加者における満足度が高く、プログラム前後の不眠重症度質問票(ISI)の数値の改善幅が良好であったことが確認できたため、2022年度もニューロスペースの睡眠改善プログラムを継続して活用したというのが背景にあります。
加えて、睡眠改善プログラムと合わせて、睡眠セミナーも2年にわたり実施し、こちらも従業員からの満足度が高い結果となっております。
■主なプログラムの効果
(1)プログラム参加者の睡眠満足度を抽出する主観アンケートの前後比較では、全体の約70%で改善がみられました(図2)
(2)また、ISI(不眠症重症度質問票)のスコアの前後比較においても、全体の約80%の方の睡眠スコアが向上しました(図2)
(3)プログラム満足度も、63名中56名(89%)の方に満足いただくことができました(図3)
図2:主要指標の前後比較
図3:プログラムの評価
■プログラム参加者の声
・睡眠時間が短くなっても、じゃあその後どうするのか?という風に対応を考えられるようになったのは自分なりに大きな進歩だと思っています。本プログラムを受講出来て、本当に良かったです。
・もっと面倒くさいかな?と思っていたのですが、始めて見ると面白く、睡眠に対する興味もわきました。良い悪いの二元論ではなく、各自にあった睡眠があるのだなとわかったのも良かったです。
・改善を実感しています。私に合ったアドバイス・対処法を頂いたことが睡眠改善の効果につながったと思います。
・短い期間ではあったが、自分の睡眠状態を把握できたし、また個別相談会も設けていただき、より良いアドバイスをいただけたのでとても感謝です。また機会がありましたら、プログラムに参加したいと思います。
■導入後のコメント 旭化成株式会社 市川様・永田様から
────導入してみて率直な感想を教えてください。
当社では2019年頃より、日中のパフォーマンスのみならず、動脈硬化性疾患やメンタル不調をはじめとした疾患リスクを高める「睡眠」に着目し、まずは実態把握を目的とした睡眠に関するアンケートを行ってきました。アンケートにおいても、「睡眠によって十分な休養がとれていない」と感じている従業員ほど、労働機能障害(プレゼンティーズム)の頻度・程度が増加する傾向にあり、どうしたら従業員へ効果的なアプローチが出来るのかと、今後の支援の方向性を模索しておりました。
そのような時にニューロスペースの睡眠改善プログラムに出会い、睡眠のプロから睡眠データの分析・アドバイスをいただけることや、従業員一人ひとりの睡眠状態に応じた支援を大切にしているプログラム内容であることに魅力を感じ、正式に採用することにしました。
約7週間という比較的長期のプログラムであることに加え、プログラム内の研修も全てオンライン開催であったことから、参加者のモチベーション維持が最も心配していた点になります。
しかし、日々の情報配信や、中間研修の実施など、こまめにフォローを行っていただいたお陰で、参加者の多くが意欲的に睡眠改善に取り組むことができ、結果として、多くの方が睡眠の質の改善・満足度の向上に繋がりました。
────今後の展望を教えてください。
今回のプログラムを通して参加者の多くが睡眠の質の改善に繋がっており、また2021年にプログラムに参加した方の2022年の睡眠アンケート結果でも、多くの方が効果を維持できていることからも、プログラムの効果は一時的だけでなく持続されていることも実感しております。
これまでは日勤勤務者が主にプログラムに参加しておりましたが、当社は工場で勤務する交代勤務者も多く在籍しているため、今後は交代勤務者における睡眠課題を抽出し、交代勤務者用の睡眠改善プログラムを実施することで、従業員全体の睡眠課題の改善に繋げていくことを検討しています。
当社の健康経営での取組において「睡眠の質・量の向上」は重要目標の一つでもあり、従業員が充実した日々を送れるよう、今後も睡眠に着目していきたいと考えております。
■おわりに
旭化成株式会社では、日勤勤務者向けの睡眠改善プログラムに加えて、工場で働く交代勤務者を対象とした睡眠改善プログラム※を2022年度トライアルで実施し、こちらの結果も良好なものとなりました。
今後も、日勤勤務者や交替勤務者を問わず、全国的な睡眠改善プログラムの展開に向け、サポートをしていきます。
※交代勤務者を対象とした睡眠改善プログラムでは、研修会をあらかじめ録画し参加者へ配信しております。その内容も、交替勤務者の実状にもとづいたものにカスタマイズしました。もし、同様のプログラムの展開をご希望の場合は、お気軽にお問い合わせください。